附帯税の概要

附帯税の概要を説明します。附帯税とは、いわゆる「追徴課税」される税のうち、本来納付すべき国税(これを本税といいます)に附帯する租税債務です(金子宏「租税法 第21版」777頁 弘文堂)。かつては追徴税と呼称されていたようですが(S22所法57ほか)、現在の法律用語では附帯税と呼ばれています。この附帯税の種類には、延滞税、利子税、加算税(過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税および重加算税)があります。附帯税は、申告納税制度のもと申告納税を怠った納税者に経済的不利益を課すことによって申告納税の実をあげる趣旨の行政上の措置であり(最判S33.04.30)、延滞税と利子税には、遅延利息や約定利息に相当する性格もあります(金子)。これらには制裁としての性質がないとはいえませんが、制裁を目的としたものではなく、罰金その他の刑事罰とは異なります。

附帯税の確定と納付

  確定・納付 納期限
延滞税
利子税
自動確定
(通法15(3)⑥)
→ 本税にあわせて納付
(通法60(3)、64(1)
① 修正申告・期限後申告
当該申告書の提出日(通法35(2)①)
② 更正・決定
通知書が発せられた翌日から1月以内(通法35(2)②)
③ 納税告知
告知書が発せられた翌日から1月以内(通令8(1))
加算税 賦課決定により確定
(通法32(1)③)
(通法16)
→ 納付
賦課決定通知書が発せられた翌日から1月以内
(通法35(3))

延滞税や利子税は本税にあわせて納税者が自主的に納付するのが建前ですが(通法60(3)、64(1))、実務では、納税者の自主納付がなければ「延滞税のお知らせ」が税務署から発せられ、これによって納付する例もみられます。

  原因 税率
延滞税 納期後納付
(通法60(1))
① 法定納期限〜納期限の2月後:年7.3% or 特例基準割合+1%(通法60(2)、措法94(1))
② 上記以後の期間:年14.6% or 特例基準割合+7.3%(通法60(2)、措法94(1))
利子税 延納、物納、提出期限延長(通法64(1)) ① 相続税延納:年6.6% or 年6.6%×特例基準割合÷7.3%(相法52(1)、措法93(3))
② その他:年7.3% or 特例基準割合(所法131(3)、相法53(1)、法法75(7)、措法93(1))

納期限と法定納期限

例えば、修正申告書の提出により納付すべき所得税について、納期限は当該申告書を提出した日ですが(通法35(2)①)、法定納期限は対象年の翌年3月15日です(通法2⑧イ、所法128)。納期限は徴収手続開始の要件として、法定納期限は延滞税の計算期間の始期として、それぞれ意味をもちます。

延滞税の計算期間の特例

修正申告・更正と源泉所得税については、延滞税の計算期間を短縮する特例が設けられており、これにより延滞税の計算期間は概ね一年となります(通法61)。この特例は、延滞税が過大となって納税者に酷な結果となるのを防止し、税務署の事情によって更正時期が異なること等による不公平を緩和する目的であるといわれています(金子)。ただし、このような特例は期限後申告や決定には設けられておらず、また、修正申告等であっても「偽りその他不正の行為」があれば適用されません(通法61(1)括弧、(3)但)。

加算税

  原因 税率
過少申告加算税 期限内申告
→ 修正申告 or 更正(通法65(1))
① 修正申告(更正予知ナシ)+調査通知前:0%(通法65(5))
② 修正申告(更正予知ナシ)
50万円以下の部分:5%(通法65(1)括弧)
50万円超の部分:10%(通法65(1)括弧、通法65(2))
③ その他
50万円以下の部分:10%(通法65(1))
50万円超の部分:15%(通法65(1)、通法65(2))
* 期限内申告税額>50万円→上記の50万円にかえて期限内申告税額(通法65(2))
無申告加算税 期限後申告 or 決定[その後の修正申告 or 更正](通法66(1)本) ① 期限後申告(決定予知ナシ)+調査通知前:5%(通法66(6))
② 期限後申告(決定予知ナシ)
50万円以下の部分:10%(通法66(1)括弧)
50万円超の部分:15%(通法66(1)括弧、通法66(2))
③ その他
50万円以下の部分:15%(通法66(1))
50万円超の部分:20%(通法66(1)、通法66(2))
* 累積納付税額>50万円→上記の50万円にかえて累積納付税額(通法66(2))
* 5年以内に無申告加算税等を課されたことアリ→上記③税率+10%[=25%or30%](通法66(4))
不納付加算税 法定納期限未納(通法67
(1)本)
① 自主納付+告知予知ナシ:5%(通法67(2))
② その他:10%(通法67(1)本)
重加算税 事実の隠蔽・仮装(通法68(1)〜(3)) ① 過少申告加算税に代わる重加算税:35%(通法68(1))
② 無申告加算税に代わる重加算税:40%(通法68(2)
③ 不納付加算税に代わる重加算税:35%(通法68(3))
* 5年以内に無申告加算税等を課されたことアリ→上記税率+10%[=45%or50%](通法68(4))

附帯税が課されない場合

  1. 本税が1万円未満(通法118(3))
  2. 延滞税・利子税が1,000円未満(通法119(4))
  3. 加算税が5,000円未満(通法119(4)括弧)
  4. 正当な理由(通法65(4)、通法66(1)但、通法67(1)但)
  5. 過少申告加算税:調査通知前の修正申告(通法65(5))
  6. 無申告加算税:期限後申告(決定予知ナシ)+期限内申告意思アリ+法定申告期限から1月以内(通法66(7))
  7. 不納付加算税:自主納付+告知予知ナシ+期限内納付意思アリ+法定納期限から1月以内(通法67(3))

地方税

地方税にも国税の延滞税や利子税に相当する「延滞金」があります(地法56(2)、地法65(1)、地法326(1)、地法附則3の2ほか)。また、国税の加算税に相当する「加算金」もありますが、これが課されるのは法人事業税のほか一定の税目に限られ(地法72の46、地法72の47ほか)、個人事業税や住民税には加算金の制度はありません。国税と地方税では、税率は同様ですが、延滞金の計算期間の特例(地法56(3)、地法326(2)など)や端数計算(地法20の4の2(2)(5))に相異がみられます。