給与支払に伴って徴収納付することとなる個人住民税について、その徴収納付義務の概要を説明します。個人住民税にも給与支払者が給与から徴収して納入する制度があります。これを個人住民税の特別徴収といいます。以下では、実務慣例に従い、特別徴収に係る個人住民税を特徴住民税といいます。

特別徴収は給与支払者の義務

特別徴収による場合と普通徴収による場合

地方税法は、前年中に給与支払を受け「年度初日」に給与支払を受けている受給者(納税義務者)については前年中の給与所得に係る個人住民税は特別徴収の方法で徴収すると定め(地法321の3(1)本)、市町村は給与支払者(源泉徴収義務者に限る)を特別徴収義務者として指定(地法321の4(1)前、同(5))、特別徴収義務者は通知を受けた特別徴収税額を給与支払をする際毎月徴収して納付する義務を負うと規定しています(地法321の5(1))。

地方税法上、給与所得に係る個人住民税について特別徴収によらない(これを普通徴収といいます)とされているのは、次の場合です。

① ⽀給期間が1⽉超その他これに類する理由により特別徴収が著しく困難(地法321の3(1)本括弧)
② 条例により他の給与支払者が単独で特別徴収(地法321の4(4)前)
③ 当該市町村内の給与所得者が少数その他特別事情により特別徴収が不適当(地法321の3(1)但)

現在、近畿2府4県では次の場合も普通徴収と取り扱われているようです(特別徴収推進チラシ裏面)。

(a) 5月31日までに退職予定
(b) 給与が少なく特別徴収しきれない

なお、他の地域では、上記 (a)(b) のほかに、(c)総受給者数が2人以下である場合や (d)青色事業専従者についても普通徴収とする基準を設けているところもあります(東京都など)。

全国の都道府県・市町村による特別徴収の推進

最近までは、小規模な給与支払者においては普通徴収を認める市町村が多数みられました。現在では、全国の都道府県・市町村が特別徴収の推進に取り組んでいます。従前は普通徴収によりたい希望を申し出ることで給与支払者は特別徴収義務を免れることもできたようですが、今後はこれを免れることは難しいでしょう。

特別徴収が徹底されると、たしかに給与支払者の事務負担は増加しますが、既に源泉所得税の徴収を実施している給与支払者であれば、定期的な事務(毎月定額の徴収・納付)の増加はそれほど大きな負担とならないでしょう。金融機関で納付する納付書の数が増える程度です。もっとも大きな負担は受給者の退職時に生じる事務です。

特徴住民税関係事務における留意点(受給者退職時)

受給者の退職時には次の3点に留意する必要があります。

① 退職時期によっては未徴収の特別徴収税額を一括徴収して翌月に納付しなければならない
② 同一市町村に納付する他の受給者分の特別徴収税額がある場合には、退職日の翌月分(納期は翌々月)以後の納付書に記載する金額を変えなければならない
③ 受給者が退職したことを市町村に知らせる届出書(給与所得者異動届出書)を提出しなければならない

詳細については、次の記事にてご確認ください。

特徴住民税と源泉所得税の異同

特徴住民税と源泉所得税は、いずれも給与から徴収・納付する義務が給与支払者にある点で類似します。しかし、両者には次のような法的性格の相違があります。この違いが特徴住民税と源泉所得税それぞれの関係事務の違いとなって現れます。

法的性格の相違

個人住民税・所得税との関係 納税義務者
特徴住民税 既に確定した個人住民税の後払的な性格 受給者(特徴住民税と普通(徴収)住民税は徴収方法の相違にすぎない)
源泉所得税 年末調整や確定申告での精算を前提とした所得税(申告所得税)の前払的な性格 給与支払者 *

*  [裁判例] 源泉所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、源泉所得税の納税に関しては、国と法律関係を有するのは支払者のみで、受給者との間には直接の法律関係を生じない(最判H04.02.18 民集46.02 77頁)。

関係事務の相違

新たに採用した年中の徴収義務 退職時の給与所得者異動届出
特徴住民税 徴収義務なし 届出あり
源泉所得税 徴収義務あり 届出なし