扶養控除等申告書における個人番号の記載について説明します。国税庁はwebサイトで個人番号の取扱いに関するFAQを公表しており、このなかで記載を省略する方法を案内しています。本稿はこの国税庁のFAQを整理したものであり、本稿で引用元を示した記号番号は国税庁のFAQに付されている記号番号です。ここでは、受給者、控除対象配偶者および控除対象扶養親族を「受給者等」といいます。

マイナンバーFAQ > 源泉所得税関係に関するFAQ

個人番号は毎年記載しなければならない(原則)

扶養控除等申告書には、受給者等の個人番号を記載しなければなりません(所法194(1)④⑤、所規73(1)①、地規2の3の3(1)①)。この扶養控除等申告書は、毎年、個人番号を含む全ての記載事項を記載したうえで給与支払者に提出する必要があり、前年と変更がなくてもその記載を省略することはできません(Q1-4)。

給与支払者にとって、個人番号が記載された扶養控除等申告書の提出を毎年受けるとなれば、番号法上、本人確認を毎年実施しなければならないという事務上の負担が生じます*。また、安全管理措置(例えば紙面で保有する個人番号は施錠して保管する)の観点からも負担となります。

* ニ年目以後は、身元確認については書類確認を省略して対面確認で対応できますが、番号確認については個人番号通知書による確認までは要らないですが過去に提出を受けた扶養控除等申告書による確認は必要となります(Q2-2)

そこで、国税庁は扶養控除等申告書への受給者等の個人番号の記載を省略できる場合として、次の(1)(2)を認めています。

(1) 扶養控除等申告書に、受給者が「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨を記載し、給与支払者が「受給者の個人番号を確認した」旨を表示する場合(Q1-5-1)
(2) 給与支払者が受給者等の個人番号等を記載した「一定の帳簿」を備えている場合(Q1-3-1)

個人番号の記載を省略する方法

省略方法の詳細

(1) 扶養控除等申告書に「提供済みの個人番号と相違ない」旨等を記載する方法 (2) 受給者等の個人番号等を記載した「一定の帳簿」を作成保存する方法
省略手順 ① 給与支払者と従業員との間での合意
② 受給者は扶養控除等申告書に「個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない」旨を記載する
③ 給与支払者は既に提供を受けている受給者等の個人番号を確認する
④ 給与支払は扶養控除等申告書に「既に提供を受けている受給者等の個人番号を確認した」旨を表示する
(Q1-5-1)
① 給与支払者は受給者から受給者等の個人番号が記載された扶養控除等申告書の提出を受ける
② 給与支払者は上記①の申告書から下記の(a)(b)(c)を記載した帳簿を作成する
(Q1-3-2)
帳簿の内容  規定なし (a) 受給者等の氏名、住所および個人番号(Q1-3-3①)*
(b) 帳簿の作成にあたり提出を受けた申告書の名称[=扶養控除等申告書](Q1-3-3②)
(c) 上記(b)の申告書の提出年月日(Q1-3-3③)
適用開始時期  規定なし 平成29年分の扶養控除等申告書から適用できる(Q1-3-2注1)
帳簿の保存期間 個人番号の記載を省略した扶養控除等申告書で最後に提出されたものの法定保存期限[その年の翌年1月10日の翌日から7年](Q1-3-7) 同左(Q1-5-1注3(1))
短所 毎年分の扶養控除等申告書に「提供済みの個人番号と相違ない」と「既に提供を受けている受給者等の個人番号を確認した」を記載(表示)しなければならない 給与支払者が受給者等の個人番号の記載された扶養控除等申告書などの提出を受けて作成された帳簿を備えていることが要件とされており(Q1-3-5)、初めて提出を受ける扶養控除等申告書には省略できない

* 上記の「帳簿の内容(a)」に変更があったときには、従業員は、遅滞なく、給与支払者に変更前後の事項を記載した「届出書」を提出する必要があり、給与支払者は、この届出書にもとづき上記の「一定の帳簿」を訂正しなければなりません(Q1-3-8)。ただし、受給者が「異動に関する扶養控除等申告書」を提出している場合には、この「届出書」は不要です(Q1-3-9 届出書は提出しなくて差し支えないと規定されているので帳簿の訂正は必要なのでしょう)。

給与支払者の負担最少化

給与支払者からみれば、扶養控除等申告書について番号法による安全管理措置が必要となることは避けたいところです。(1)の方法であれば、これを回避できますが、毎年分の扶養控除等申告書に「提供済みの個人番号と相違ない」旨等を記載する負担が発生します。他方、(2)の方法であれば、この負担は生じませんが、受給者から最初に提出を受ける扶養控除等申告書には受給者等の個人番号を記載しなければならず、ある年に中途就職者がある場合には中途就職者と年初在職者で扶養控除等申告書の管理方法を異にするという問題を抱えてしまいます。最適な方法は、初年分の扶養控除等申告書から受給者等の個人番号を省略する方法です。

国税庁は、(1)の方法により提出を受けた扶養控除等申告書およびこれと紐付けられるよう管理された個人番号にもとづき(2)の帳簿を作成することは可能としています(Q1-3-5なお書)。この取扱いを使って、次のとおりに対処するのが、給与支払者にとって負担最少化の方法でしょう。

① 初年は(1)の方法により受給者等の個人番号を省略する
この時点で(2)の方法における「帳簿の内容」と同一の記録を残す
② 翌年以後は(2)の方法により受給者等の個人番号を省略する
異動が生じた場合には「異動に関する扶養控除等申告書」を提出させる

受給者が個人番号の提供を拒否した場合

受給者が個人番号の提供を拒否した場合には、給与支払者はその受給者の源泉徴収票や給与支払報告書に受給者等の個人番号を記載することができません。給与支払者の義務違反として個人番号の記載がないのか、個人番号の提供が拒否されたために記載がないのかを判別する証拠として、この場合には、提供を求め拒否された経過等を記録・保存しておくのが適当です(Q1-13参照)。

なお、扶養控除等申告書に従業員等の個人番号の記載がない場合でも、扶養控除等の適用の可否を判断するために必要な事項が記載されていれば、扶養控除等申告書が提出されたものとして税額計算を行って差し支えない、とされています(Q1-14参照)。

給与支払者の個人番号・法人番号

給与支払者の個人番号・法人番号は、原則として扶養控除等申告書の提出を受けた後に付記する必要がありますが、税務署から扶養控除等申告書の提出を求められるまでの間は付記しなくても差し支えないとされています(Q1-10-1)。

給与支払者の法人番号は、扶養控除等申告書にあらかじめ印字することができます(Q1-11)。他方、給与支払者の個人番号は、番号法上、個人番号の提供制限に抵触するため、扶養控除等申告書にあらかじめ印字することはできません(Q1-11注)。