家族信託の事務 3 – 信託税制 –

前稿でもふれたとおり、家族信託の大多数は受益者等課税信託であり、そこで申告納税義務を負うのは受益者です。受託者が申告納税を行うために必要となる資料を保有しているのは受託者ですから、受託者には信託税制を理解して受益者における申告納税の基礎となる資料を受益者に提供することが期待されています。本稿では、信託税制のうち家族信託に関係するところを整理します。

信託税制

信託課税の方式

一般人にも馴染みがある投資信託は受益者が委託者から配当を受ける時に課税されますが(租税特別措置法8の2(1)ほか)、これは信託税制のなかで例外的方式です。信託税制では、信託財産・債務や信託収益・費用のすべてが受益者に帰属すると擬制して課税する(所得税法13(1)本ほか)のが原則的方式とされています。信託財産・債務は形式的には受託者に帰属しますが、実質的には受託者は受益者のために預かっていると評価できるので、信託財産・債務のみならず、その運用から生ずる信託収益・費用も受益者のものという思想(導管理論 conduit-theory)が採られています。この思想によった課税方式はパス・スルー課税(pass-through)とよばれ、信託のほか民法組合や有限責任事業組合(LLP)においても採用されています1)。このような原則的方式の対象となる信託を「受益者等課税信託」といいます。家族信託は、受益者等課税信託に該当するのが一般的と考えられますが、例えば「まだ生まれてない孫」を受益者とする場合には、例外的に信託財産を法人と擬制して受託者が納税義務を負う「法人課税信託」(法人税法4の6(1))として課税されることがあります2)

受益者の定義

受益者等課税信託では受益者が納税義務者となりますが、信託法と税法では受益者の定義が異なります。信託法では受益者とは「受益権を有する者」(信託法2(6))をいいます。他方、税法では「受益者としての権利を現に有する者」(所得税法13(1))27)28)をいいます。国税庁の解釈によれば、税法上の受益者には、停止条件付信託財産受給権者や受益者連続信託の後続受益者(信託法90(1)参照)は含まれません(所得税基本通達13-7)29)。例えば、受益者連続信託の後続受益者は、信託法上は受益者として受託者に対する報告請求権(信託法36)などの権利を行使できますが、税法上は受益者ではないので納税義務は生じません。

所得課税

所得課税においては、原則として、受益者は信託財産に帰属する資産・負債を有し、かつ信託財産に帰せられる収益・費用は受益者の収益・費用と擬制され、これが受益者等課税信託です(所得税法13(1)本)3)4)。これにより、受託者が信託財産に属する資産を譲渡した場合には、受益者がその資産を譲渡したものとして課税され30)、受益者が信託受益権を譲渡した場合には、その信託受益権に係る信託財産に属する資産・負債が譲渡されたものとして課税されることになります(所得税基本通達13-6)31)。したがって、これらの場合には、受益者において、例えば「居住用財産の買換え特例」(租税特別措置法36の2)の適用もありえます32)。受益者の収益・費用と擬制されるのは信託財産に帰せられる収益・費用のそれぞれであって、これらの差額である信託利益・信託損失が受益者の収益・費用と擬制されるわけではありません(総額主義 所得税基本通達13-3)5)6)

受益者等課税信託の課税期間は、個人であれば暦年(所得税基本通達13-2)、法人であれば事業年度(法人税基本通達14-4-2)です。信託法は「毎年一回、一定の時期」に貸借対照表や損益計算書などの「財産状況開示資料」(信託計算規則4(3))を作成するよう受託者に義務づけているにすぎず(信託法37(2))7)、信託の計算期間は1年以下の期間をもって信託行為で定めることになります8)。この信託の計算期間が受益者の課税期間と一致していなければ、受益者は不一致期間の収益・費用を調整して申告納税しなければならなりません。家族信託においては信託の計算期間は受益者の課税期間に合わせておくのが適当でしょう9)10)

受益者が2人以上ある場合は、信託財産に属する資産・負債の全部を各受益者がその有する権利の内容に応じて有するものとされ、信託財産に帰せられる収益・費用の全部が各受益者にその有する権利の内容に応じて帰せられるとされます(所得税法施行令52(4))11)12)。信託財産がマンションやオフィスビルのように構造上区分された数個の部分を独立して住居や事務所として供することができるものである場合、2以上の受益者が有する権利の目的となっている部分(受益者等共有独立部分)については「当該受益者等共有独立部分につき権利を有する各受益者等が、各自の有する権利の割合に応じて有している」ものとして取り扱われます(所得税基本通達13-4)13)。この前提として、構造上区分された独立した部分のうち1人の受益者だけが有する権利の目的となっている部分(受益者等共有独立部分でない部分)については、その1人の受益者だけに帰属するとされているようです14)

個人の受益者に帰属すると擬制される収益・費用がどの所得区分に該当するかについて、その判定の仕方を明示した規定はみあたりません。かつての通達「土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて」(以下「土地信託通達」といいます)15)では「個人の有する信託受益権の目的となっている信託財産の管理、運用又は処分による所得が、当該個人の利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、譲渡所得、一時所得又は雑所得のいずれに該当するかについては、当該個人がその信託財産に帰属する財産債務を有し、その管理、運用又は処分を自ら行っているとした場合に該当することとなる所得として判定する」と規定されていました(土地信託通達 所得税法関係2-1)。この通達は受託者により行われる「管理、運用又は処分」を受益者が「自ら行っているとした場合に該当することとなる所得として判定する」というのですから、ここでは所得帰属のみならず所得区分の判定においても受託者=受益者という関係が成り立ちます。このように導管理論を貫いている土地信託通達の考え方は、現行の信託税制の全般において取り入れられているといわれています16)。受益者における所得区分の判定の仕方に関する明文規定を欠くなかで、今日でも土地信託通達におけると同様に解する見解が多いようですが33)、これと異なる見解もあります17)。受託者において信託にもとづいて営まれる事業が受益者の事業と評価されるかどうかによって、①資産損失(所得税法51(1)(4))、②貸倒損失(所得税法51(2)、所得税法61(1))、③専従者給与・控除(所得税法57(1)(3))、④青色申告特別控除(租税特別措置法25の2(1)(3))に差異が生じます。これらの適否判断には受益者における所得区分の判定の仕方に関する見解の相違が影響しそうです[[信託にもとづいて営まれる事業が受益者の事業と評価されることを前提とする記述として、西野克一「平成22年2月改訂版 回答事例による所得税質疑応答集」大蔵財務協会 140頁がある。いわく「土地信託による信託財産の賃貸は、土地等の所有者が直接賃貸しているものと考えられ、税務上は、土地所有者(受益者=委託者)の不動産所得として取り扱われています。…また、信託した土地が事業的規模に該当するかどうかは、信託した土地の規模、収入の状況、物的施設などを勘案して判定することになります」。/ 平川忠雄ほか「民事信託実務ハンドブック」日本法令 221頁は、受託者における賃貸不動産の管理事務として「不動産所得の申告等のための帳簿等の記録等」をあげ、その中で「事業規模(5棟10室、共有者各々適当可)及び複式簿記であれば青色申告特別控除は65万円になりますので、複式簿記による適正な帳簿の作成及び書類の保存…が不可欠となります」と述べている。この記述は受託者が信託にもとづいて事業を営めば受益者において65万円の青色申告特別控除が適用されること前提としたものであろう。]]18)

個人の受益者については、信託から生じた不動産所得の損失は生じなかったものとみなされます(租税特別措置法41の4の2(1))。自益信託であれば資産課税はなく、所得課税においても資産・負債の移転を擬制した課税はありませんが、この不動産所得の損失に係る損益通算の制限は適用がありますから注意が必要です19)。また、法人の受益者については、信託損失のうち信託財産を超える部分は損金に算入されません(租税特別措置法67の12(2))20)

資産課税

資産課税においては、適正対価を負担せずに受益者となる者がある場合、その受益者は、信託効力発生時または新たな受益者となった時に、委託者または受益者であった者から、信託に関する権利を遺贈・贈与により取得したと擬制されます(相続税法9の2(1)(2))21)。この場合、その受益者は「信託財産に属する資産及び負債」を取得・承継したとみなされます(相続税法9の2(6))22)。したがって、受益者において、例えば「小規模宅地等の特例」(租税特別措置法69の4)の適用もありえます(租税特別措置法通達69の4-2)23)

「信託財産に属する負債」が受益者の取得・承継したとみなされる対象であることは法文上明らかですから(相続税法9の2(6))、これに該当する債務について債務控除(相続税法13(1))の適用があることは当然です。しかし、信託法上の「信託財産」には債務は含まれないといわれており24)、相続税法上の「信託財産に属する負債」の意味内容については必ずしも明白ではありません。かつての土地信託通達では「信託財産に帰属する債務とは、その信託財産の取得、管理、運用又は処分に関して受託者が負担した債務及び受益者が支払うべき信託報酬をいう」と規定されていました(土地信託通達 相続税法関係4-2(1))。ところで、債務控除の対象となる債務は「確実と認められるもの」に限られます(相続税法14(1))。土地信託通達のいう「信託財産の取得、管理、運用又は処分に関して受託者が負担した債務」は信託法上の「信託財産責任負担債務」に該当し(信託法21(1))、その弁済原資として信託財産が引き当てられているので(信託法2⑨)、それを信託財産でもって弁済することができる限りにおいて「確実と認められるもの」に該当するでしょう。しかし、信託財産でもって弁済することができない債務については、受益者は受託者との間の費用補償契約(信託法48(5)参照)がない限りこれを負担することはないので25)、債務控除の要件である「確実と認められるもの」を充足しないおそれがあります26)

受益者が2人以上ある場合は、信託に関する権利の全部をそれぞれの受益者等がその有する権利の内容に応じて有するものとされています(相続税法施行令1の12(3)②)34)

References

1 組合について、税法は「組合自体を所得の帰属主体と考えることはできないので、例えば、収入金額についていえば、組合が受け取る収入はその都度組合員が分配割合に応じて収入したとみる考え方」(三又修ほか「平成29年版 所得税基本通達逐条解説」大蔵財務協会 436頁)を採っている(所得税基本通達36・37共-19、同36・37共-20参照)。
2 「まだ生まれてない孫」を受益者とした場合に法人課税信託として課税される例
[信託当事者]
・委託者 = 祖父
・受託者 = 子
・当初受益者 = 祖父
・後続受益者 = 未出生の孫
・みなし受益者・特定委託者に該当する者はいない
[各時点の課税関係]
(1) 信託成立時は、委託者(祖父)=受益者(祖父)であるため課税関係は生じない。
(2) 祖父が死亡した時に孫がまだ生まれていなければ、受益者の存在しない信託(法人課税信託 / 法人税法2条29の2号ロ)となり、次の課税関係が生じる。
① 当初受益者(祖父)について、受託者(子)に対する譲渡が擬制され(所得税法6の3⑦)、譲渡益に対する所得税が課される(所得税法59(1))。
② 受託者(子)について、信託財産は受託法人と擬制され(法人税法4の6(1) 4の7(1))、受贈益に対する法人税が課される(法人税法22(2))。
③ 受託者(子)について、租税回避阻止のため、当初受益者(祖父)から受託者(子)に対する信託受益権の遺贈が擬制され(相続税法9の4(2))、相続税が課される。
(3) 孫が生まれた時は、次の課税関係となる。
① 受託者(子)について、受託者(子)から後続受益者(孫)に対する簿価による引き継ぎがあったものとされ(法人税法64の3(2))、課税関係は生じない。
② 後続受益者(孫)について、受託者(子)から後続受益者(孫)に対する簿価による引き継ぎがあったものとされ(所得税法67の3(1))、かつ引き継ぎにより生じた収益損失はないものと扱われるので(所得税法67の3(2)(8))、課税関係は生じない。
③ 受託者(子)から後続受益者(孫)に対する信託受益権の贈与が擬制され(相続税法9の5)、贈与税が課される。
3 これと同様の規定が法人税法12(1)本にもあり、これと類似の規定が消費税法14(1)本にもある。
4 現行所得税法13(1)は「信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限る)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する」と規定しているが、平成19年の税制改正前の所得税法13(1)では「信託財産に帰せらる収入及び支出については、受益者が特定している場合にはその受益者、受益者が特定していない場合又は存在していない場合にはその信託財産に係る信託の受託者が、その信託財産を有するものとみなしてこの法律の規定を適用する」されていた。武田昌輔「DHC コンメンタール所得税法1」第一法規 1135頁によれば「この規定(上記改正前法:筆者)に対しては、信託財産に属する資産及び負債を受益者又は委託者が有するということが明確でないという指摘もあったが、平成19年の税制改正により、信託財産に属する資産及び負債は、受益者が有するものとみなすことが明確になった」という。
5 これと同様の規定が法人税基本通達14-4-3 にもある。
6 武田昌輔「DHC コンメンタール法人税法1」第一法規 955の4頁は「受益者等が信託財産を会計処理上『信託受益権』として資産計上し、その信託財産に帰せらる収益及び費用を信託の計算期間末に『信託利益』として純額で計上することが仮にあっても…純額法でなく…総額法による」という。
7 寺本昌宏「逐条解説 新しい信託法 補訂版」商事法務 147頁は「少なくとも1年ごとに書類等を作成すべきことを義務付けているにすぎず、、各信託の実情に応じて、信託行為の定めにより1年よりも短い期間ごとに作成すべきものとすることを妨げるものではない」という。
8 渋谷陽一郎「民事信託のための信託監督人の実務」日本加除出版 346頁は「計算期間及び計算期日はそれぞれの信託の個別事情によって設定され」るという。
9 笹島修平「信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ」大蔵財務協会 196頁
10 信託と同様に導管理論を採っている組合については、組合の計算期間が1年以上であり、かつ損益の帰属が1年以内であれば、その計算期間を基として計算してその終了日の属する年分の所得とすることも認めれており(所得税基本通達36・37共-19の2、法人税基本通達14-1-1の2)、信託においてもこれと同様の取り扱いとされるのが望ましいといわれている(注解所得税法研究会「五訂版 注解所得税法」大蔵財務協会 104頁)。
11 これと同様の規定が法人税法施行令15(4)があり、これと類似の規定が消費税法施行令26(4)にもある。
12 この規定について、奥村眞吾「信託法の活用と税務」清文社 112頁は「資産の共有持分のように、3分の1ずつABCに帰属するという考え方ではなく、また質的に均等に各受益者に帰属することまでも定めたものではありません。信託財産の中身は様々で、例えば、土地、預金、株式、著作権などが信託財産とすれば、受益者Aは土地と株式、Bは預金、Cは著作権というように、信託行為の実態に応じて各受益者に帰属を判定します。このことが『受益者がその有する権利の内容に応じて有する』ことになります」という。
13 これと同様の規定が法人税基本通達14-4-4にもある。
14 森文人ほか「六訂版 法人税基本通達逐条解説」 税務研究会出版局 1313頁
15 昭和61年7月9日付直審5-6ほか4課共同(法令解釈通達 )/ 現行信託法の施行に伴い廃止
16 川口幸彦「信託法改正と相続税・贈与税の諸問題」税大論叢57号 360頁は「新しい信託課税制度については、信託導管論…が徹底された形で改正がなされたとの専門家の意見がある。これは、相続税法第9条の2第6項『…信託に関する権利又は利益を取得した者は、当該信託財産に属する資産及び負債を取得し、又は 承継したものとみなして、この法律の規定を適用する…』という規定が設けられ、昭和 61 年に発遣された『土地信託に関する所得税、法人税並びに相続税及び贈与税の取扱いについて』…の考え方を取り入れたからである。 この考え方は、所得課税をはじめ税制全般に渡って貫かれている」という。同370頁も「平成19年度改正後の信託課税制度は、この土地信託通達の考え方を取り入れたということができる。そして、土地信託通達1-1に定めるとおり、同通達の適用を受ける信託とは…などの要件を満たすものをいうこととされていた。平成19年度改正後の信託課税制度については、これらの土地信託通達の要件を満たさないものについても適用されることとなったのである」という。/ 小原一博「八訂版 法人税基本通達逐条解説」税務研究会出版局 1258頁は、現行の法人税基本通達14-4-6(信託の受益者としての権利の譲渡等)は土地信託通達の法人税3-2(信託受益権の譲渡等)で定められていたものと同趣旨であるという。
17 齋地義孝「信託法の制定等に伴う税制上の措置(所得税関係)」財務省「平成19年度税制改正の解説」113頁は、不動産所得の損失の損益通算の制限(租税特別措置法41の4の2(1))に関連して信託による事業に係る収益・費用の所得区分について次のように述べている。「この特例は、上記1の組合事業による損益通算等の特例制度と同様、不動産所得による損失が制限の対象とされ、事業所得による損失についてはその対象とされていません。これは、組合事業や信託において事業を営んでいた場合には、個人の組合員や受益者のその事業への関与度合いが希薄であれば、その生ずる収益及び費用は雑所得として扱われ、その損失については損益通算が認められていないことからあえて損失制限の対象とする必要性が乏しいことによるものと考えられます。なお、信託の受益者については上記で述べたとおり、信託における事業への関与度合いは希薄であることから、信託による事業に係る収益及び費用については雑所得として取り扱われることになると考えられます」。/ 福田智子「受益者課税制度における所得区分」租税資料館賞受賞論文集25回(下巻) 416頁は「所得税法が所得区分を定め税額計算に差異を設けているのは、応能負担の原則に由来するもの…であり、所得分類はその所得の経済的実質に即して解釈適用することが合理的…と解されていることに鑑みると、所得区分の判断は所得が帰属する納税義務者(受益者)における態様等により行われることになろう」という。
18 前掲注釈:齋地 113頁は「信託による事業に係る収益及び費用については雑所得として取り扱われることになる」と述べている。
19 笹島修平「信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ」大蔵財務協 250頁
20 信託損失の信託財産超過部分が損金算入されない理由として、笹島修平「信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ」大蔵財務協 287頁は、受益者の損失負担は信託財産が限度とされていることをあげている。
21 このほか「一部の受益者が存しなくなった場合」や「信託が終了」した場合にも相続税・贈与税の課税関係が生ずることがある(相続税法9の2(3) 9の2(4))。
22 武田昌輔「DHC コンメンタール相続税法1」第一法規 1085の28頁は、受益者が取得したとみなされるのは「信託財産の構成物」であると表現する
23 小規模宅地等の特例や贈与税の配偶者控除の適用については、受益権が収益受益権と元本受益権に複層化された信託においては、居住権が付与されていない元本受益者は居住の用に供する権利を取得していないことからこれらの特例を適用できないのではないか、という不明瞭な点があるとの指摘がある(平川忠雄ほか「民事信託実務ハンドブック」日本法令 410頁)。
24 寺本昌宏「逐条解説 新しい信託法 補訂版」商事法務 88頁(注2)
25 信託法48(1)は信託財産からの費用償還を認めるにすぎない。
26 笹島修平「信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ」大蔵財務協会 292頁 / 同書は債務が信託財産を超える場合について「長男(受益者:筆者)が当該借入金の連帯債務者若しくは連帯保証人であれば、長男が当該借入金を負担することになると考えられますので、債務控除することができると考えます」という(笹島修平「信託を活用した新しい相続・贈与のすすめ」大蔵財務協会 293頁)。
27 これと同様の規定が法人税法12(1)、消費税法14(1)、相続税法9の2(1)にもある。
28 このほか「信託を変更する権限を現に有しかつ信託財産の給付を受けることとされている者」も受益者とみなされている(所得税法13(2)、法人税法12(2)、消費税法14(2)、相続税法9の(5)はこの者を「特定委託者」と呼称している。/ 所得税基本通達13-8、法人税基本通達14-4-8、消費税基本通達4-3-5、相続税法基本通達9の2-2)。
29 これと同様の規定が法人税基本通達14-4-7、消費税基本通達4-3-4、相続税法基本通達9の2-1にもある。
30 武田昌輔「DHC コンメンタール所得税法1」第一法規 1135頁
31 これと同様の規定が法人税基本通達14-6、消費税基本通達4-3-3にもある。
32 法人税基本通達14-6(注)は「例えば、受益者等がその有する権利の目的となっている信託財産に属する資産が土地である場合において、当該権利が譲渡されたときには、当該受益者等が当該土地を譲渡したものとして、その譲渡の態様に応じて、譲渡、交換、収用、買換え等の法人税に関する法令の規定の適用がある」とする。
33 注解所得税法研究会「五訂版 注解所得税法」大蔵財務協会 96頁は、「その規定(所得税法13(1):筆者)は、…その所得の帰属者・納税者についての定めであるとともに、その『みなし規定』がその収益及び費用の発生の時点で働き、その所得は、その発生時に受益者等に帰属するものとされ、また、その所得の性質・区分(利子・配当等)について、同時期の状況でその判断がなされる内容のものとして理解されている」「その税制(本文信託=受益者等課税信託:筆者)の基本的な特色は、信託収益についての納税者は、その受益者等とされ、その収益を生む信託財産ないしその所有権が帰属する受託者は、そのらち外とされていることであり(いわゆる『実質所得者課税の原則』に合致)、税制上、信託受託者は、その利益の受益者等に向けた『導管』とされ、それもその収益の発生時に、その時点で判断される性格の所得として受益者等への帰属があるとされる点で、いわば『完全導管制』の仕組みといってよい。半面、個人の受益者等は、その帰属所得につき、上記のように所得税法によるその所得区分による所得として、同法の適用を受ける」という。/ 喜多綾子「信託課税における所得計算ルールの課題と理論的検討」立命館法学331号 127頁は「所得の分類については、受託者がどのような運用を行っているかにより判断され、その所得計算の方法はそれぞれの規定により所得計算する。所得の分類を判断するうえにおいて、判断すべき基準は、受託者が行っている運用方法の内容のみであり、受託者が事業を行っていれば、事業所得となるのではないだろうか。なぜなら、所得税法13条の解釈からすると、信託財産を有するものとみなし、信託財産に帰せられる収入及び支出については、この法律を適用するとしていることから、受託者が行う事業は受益者が行っているものとみなされ、受託者と受益者の関係は、所得税法13条は何ら要求していないからである」という。/ 高野弘美ほか「Q&A不動産所得をめぐる税務 最新版」大蔵財務協会 36頁は、土地信託から生ずる所得は受益者の不動産所得となる、という。
34 信託受益権の評価においては、課税時期における信託財産の価額にその受益割合を乗じて計算した価額によって評価する(財産評価基本通達202(2))。